8bitは癌に効く?

2020年4月13日

一部において有名な名言ですが

“ヘヴィメタルはまだガンには効かないがそのうち効くようになる“

こういうセリフもヘヴィメタルらしくて良いですね。メタルは死なない。

さてメタルの話ではなく8bit、いわゆるFCに代表されるビデオゲームや音楽ですね。

おりしもPS5が発表されましたが、どんどんビデオゲームも映像が進化していっております。その進化において、8bitの表現というものが淘汰されるのではないかというとそうでもなさそうで、8bitや16bit的な表現の新作も今でも出てます。

8bitというとFCのスーパーマリオブラザーズが大変に有名で、小学校の鑑賞教室で箏でスーパーマリオ地上BGMを弾くと目を輝かせる子がたくさんおり、 1986年に発売したゲームであるのになぜか今の小学生も地上BGMを知ってるというのがすごいですね。任天堂の企業努力の凄さと8bitの表現というものの強みを感じます。

IPとしてマリオをしっかりと育ててるというのはもちろんなのですが、8bitのドット絵や同時発音数の少ない音楽の表現が実は定年齢層にとって認知しやすいのではないかと考えております。

子供向けアニメといえばアンパンマンや機関車トーマスが有名ですが、わかりやすい形、色のキャラというのは大事で、視覚が十分に発達していない小さな子に認知しやすいということになります。そしてそれぞれの境界線がしっかり別れてて、色味も違いがハッキリわかるということになるのですが、その特徴は8bitのビデオゲームの特徴でもあると思います。

子供が描く絵というのもわかりやすい色、大雑把な形になるもので、少し前に書いたブログとも関連するのですが、アウトプット出来る能力が情報をインプットする時にも影響をするものだと考えてます。その段階においてはインプットするのもわかりやすい色、大雑把な形状の方がしやすいと。

小さい子にとってキャラを認知しやすいというのは強みでもあるし、さらにビデオゲームの場合、それを自分で動かせる能動的な強みもあります。そしてゲームミュージックはBGM(バックグラウンドミュージック)でありながら特殊な性質を持っていて、ゲームの内容にもよりますが何度も繰り返し同じBGMを聴くことになります。

ゲームをプレイしている時に何度も繰り返し聴いているもので体感的に音楽だけ聴いてもゲームをしている時の高揚感とか感じてしまうのではないかなと思ってます。自分も実際そう思うことが何度もあるのですがいかがでしょうか。

また、音楽においてもですが、まずはわかりやすい、歌いやすいメロディーが好まれます。リズムもわかりやすく。ハーモニーも簡単に。そこから段階を経て複雑なメロディ、リズム、ハーモニーを楽しめるようになると思います。はじめからわかることはないんじゃないかなと。

少し前にTwitterでオーケストラのクラシック音楽についてどうしたら客が来るかとかそういうのを見かけましたし、定期的にみかけるネタではあるのですが、オーケストラの響きというのも慣れないと楽しみづらいところはあると思います。これは他人ごとではなく、自分のやっている和楽器の世界も同じですね。こちらの古典は普段耳に入ってくる音楽と構造が違うので音楽のみでのお話となるともっと難しいんじゃないでしょうか。

音楽は視覚に残らない表現のためよりわかりづらいのですが、こちらもやはり簡単なものから認知できるようになって、経験を経て複雑な響き、構成を楽しめるようになるものです。

自分も小学5年生の時に武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を授業で聴いたものの全く面白いと思いませんでした。ですが二十歳を越え、NHK邦楽技能者育成会の授業で聴いた時はめちゃくちゃ面白く感じたもので、これは自分が特に高校から色々な分野の音楽をかなり聴いてきたからだと思います。経験によってつまらなかったものが面白くなった。こういうことは結構あると思います。味覚で言えば歳と共に嗜好が変わるというか味わえるものが増えると思います。それと同じことが聴覚でも起こり得る。聴いてるハーモニーに慣れてくると不協和なものも楽しめるようになったりするんですよ。本当に。

これは逆に自分が面白いと思っている作品でも、ほかの人にとっては経験が違うのだから面白いと思うかはわからないというところで、「どうしてコレの良さがわからないんだ!」と自分の価値観を絶対化しないほうが精神衛生上良いと思います。そもそも食事だって好きな食べ物嫌いな食べ物あるんだから音楽だってそういうのがあって当然。「クラシックは素晴らしいものだ」というのは学校教育の賜物です。明治維新以後の西欧列強に文化的に並び立つのだという苦労が偲ばれます。邦楽畑の人間として皮肉を込めておりますが苦笑 もちろんクラシック“も”素晴らしいですね!

話が逸れてきましたが、とにかく経験の少ない段階においてはわかりやすいメロディと、そして8bitのビデオゲームのもつ音色の特殊性。音色の輪郭のわかりやすさが子供の耳にはかなり興味を掻き立てるのではないでしょうか。メロディについてはわかりやすいというより同時発音数が少ないのでメロディを分離して聴きやすいという感じだと思います。メロディそのものはスーパーマリオからして複雑というか簡単に弾けない臨時記号が出てくるものですね。とにかく聴きとりやすい、口マネしやすいというところはあるのではと思ってます。

そして前述しましたがゲームプレイ時に繰り返し聴き込み刷り込まれる。するとそのゲームの音楽を聴いただけでパブロフの犬のようにプレイしてる時の高揚感を得る。実際にこの辺りは認知心理学的にはどうなんでしょうか。気になるところです。

さて、タイトルについてですが、8bitは癌に効くかはわかりません。とりあえず効いたらいいなと思ってます。いずれ効くようになるかもしれません。

そして8bitのビデオゲーム自体は視覚的にも聴覚的にも認知しやすい表現だと思うのでこれから先も一定の需要があるものだと思ってます。

子供に人気のある表現なのである程度やると「そんな子供みたいなこともうやらない」と言って次の段階のゲームをやったり映画をみたりするのですが、それも経験があって次の段階が楽しめるのです。

そして例えばディズニーにしてもジブリにしても大人になって観るとまた違った見え方して楽しめるように8bitのゲームもそういうものありますね。昔は技術的に8bitしか出来なかったところから今は選択肢として8bitというものがある、という形に変わったわけで特徴が強いので自分は8bitは死なないと思ってます。

Heavy metal never dies.

And

8bit never dies.

もちろん箏曲も死にません。