ビデオゲームのリメイクと伝統芸能

2020年6月19日

先日、ファイナルファンタジー7のリメイクや聖剣伝説3のリメイクが発売されましたね。ファイナルファンタジー7のオリジナルはプレイステーション、聖剣伝説3はスーパーファミコンのソフトとして発売されたものとなりますが、当時そのゲームを遊んでいた方々も年齢を経ておそらくリメイクの開発にも関わっていたりすることでしょう。

ビデオゲームに限らずともディズニーの元々アニメーションで製作されたものが実写映画化されたりという動きもありますが、これも一種のリメイクだと思いますが、20世期後半から主に隆盛してきた文化、俗にサブカルチャーと位置ずけられたりしたものも時間を経て文化的な継承が始まっている流れなのかなと感じております。

いわゆるリメイクというものも、当時発売されてヒットしたものを現代の技術で現代の状況に合わせて再現、そして表現の伸長などを狙っているものと思いますが、コンテンツの核となるオリジナルらしさをふまえられるかどうかというところも意識しないとならないことでしょう。オリジナルを体験している方が消費者側にもいるのでそこは厳しい目にさらされる部分になるかとも思います。

このようなことを考えていると、伝統芸能、例えば歌舞伎の襲名と似ているところがあるのではないかと感じました。ご存知、歌舞伎は江戸時代に始まり現代まで続いている伝統芸能ですね。役者がそれぞれ家を、名前を継いでいるという形をとっており、市川家、尾上家、中村家、松本家など家計で得意とする芸、演目が異なります。十八番(オハコ)という言葉も市川家の得意とした18の演目に由来する言葉です。

タイムリーに2020年5月に13代目市川團十郎襲名披露公演がなされる予定でありましたが、コロナ禍により延期となってしまいました。さて、この襲名というシステムにおいて、先代の芸を受け継ぐとともに未来へ伝えるという役割も担うこととなります。11代市川海老蔵が13代市川團十郎を継ぐ、ということで、中身の人間は同じながら役者としての芸名が変わるというのは面白いなあと思いますが、企業で言うところの役職名という意味合いもあるのかなと思います。13代市川團十郎の襲名披露公演に関して本人のインタビューの言葉を引用しますと

「市川團十郎家として、継承しなくてはいけないこと、そして私がやりたいものが重なる、ということを目指しました。やはり歌舞伎十八番の内『勧進帳』、『助六由縁江戸桜』は外せないと思いましたし、やりたかった演目です。また、父から教わったことのなかで、『勧進帳』、『助六由縁江戸桜』、『暫』、『外郎売』がございまして、『外郎売』は倅に渡そうと。伝統文化を受け継いでいくという意味で、一人でやってもらうことを一つのテーマと思っています」

引用元:https://www.kabuki-bito.jp/news/6093/

とのことで、得意としている演目の継承をさらに子にも繋げようというメッセージですね。

当然ながら歌舞伎と比べるとビデオゲームの歴史は浅いものですが、リメイクの意義というところにおいては繋がるところが十分にあるのではないでしょうか。タイトルがビッグタイトルであるほどリメイクにもプレッシャーがかかることと思います。歌舞伎の現在まで続いてる演目も当然、新作だった時代があるわけで、ヒットしたからこそ次代に引き継がれたし、演目を洗練、時代に合わせた適合をして現在まで残ったのだと思います。リメイクというものは未来への継承の一つと言えるのではないでしょうか。

また、シナリオやキャラが濃厚なRPGのような作品だとタイトルそのもののリメイクという手法になりますが、スーパーマリオのようにキャラそのものがビデオゲーム内役者のような形で新作を出していく形のものもありますね。有り様がそれぞれ違いますが、継承という形の一つの形態でもあると思います。

現在進行形のコロナ禍において文化事業の存続も大きな危機にさらされているかと思いますが、文化とは何か、ということを改めて考える機会であるとも思います。私はビデオゲームを愛好しておりますし、それに付随するビデオゲームミュージックももちろん愛好しておりますが、デジタルなビデオゲームミュージックからまた生の音楽につながる力もあると感じております。コロナ禍においても触れられるバーチャルな体験からまた生の体験につながるような欲求が生まれ得ると思いますもので、なんとか耐え抜き頑張っていきたいものですね。